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古代の皇位継承―天武系皇統をめぐる「祟り」と「天罰」

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週刊長野に紹介記事が
載りました

著者:宮澤和穂
ISBN 978-4-86330-192-4 C0021
定価:本体4000円+税 256頁
A5判・上製クロス装・カバー 2018年4月末刊

古代日本の皇位はどのように継承されたのか?

初代神武天皇から皇位は連綿と継承されてきたが、国号「日本」、君主号「天皇」が使用されたのは第40代天武天皇、第41代持統女帝の時代からだった。その「日本国天皇」のはじまりの時代、皇位継承に大きな影響を与えていたのは、現在では迷信とも見られがちな「祟り」と「天罰」、そして、それらを鎮撫しようとする願望であった。天武天皇と持統女帝、更に、藤原不比等を中心として、古代日本の皇位継承の裏側を探る。

○天武天皇は、なぜ大津皇子を抜擢したのか?
○天武天皇は、なぜ草薙剣に祟られたのか?
○物部麻呂は、なぜ「石上」に改姓したのか?
○持統女帝は、なぜ30回以上も吉野行幸を繰り返したのか?
○藤原不比等は、なぜ草壁皇子を尊重したのか?

などの古代史の謎に迫る一冊!

著者略歴

宮澤和穂(みやざわ・かずほ)
1955年 長野県長野市戸隠生まれ
1978年 皇學館大学文学部国史学科卒
現在  長野市立信州新町公民館長
【著書】
『戸隠竜神考―隠された原祭神を追う―』(銀河書房・1992)
『天武・持統天皇と信濃の古代史』(国書刊行会・2003)
『玄冬の戸隠』(龍鳳書房・2011)
『鬼無里への誘い』(ほおずき書籍・2014)

目次

はじめに
第一章 祟りと天罰の温床
一 壬申の乱と祟り
二 吉野の盟約と天罰
第二章 天武天皇の後継構想
一 大津皇子の抜擢
二 天武天皇の妥協
三 天武天皇の配慮
四 天武天皇の統治観
第三章 草薙剣の祟り
一 草薙剣の由来
二 天武朝と草薙剣
三 鵜野皇后と草薙剣
四 尾張大隅と草薙剣
第四章 草薙剣の祟りと物部麻呂
一 麻呂の改姓の疑問点
二 麻呂の昇進の疑問点
三 麻呂の改姓の意図
四 宅嗣の改姓の意図
第五章 持統女帝と吉野の盟約
一 吉野行幸の謎
二 大津皇子の謀反事件
三 草壁皇太子の後継問題
四 高市皇子の後継問題
五 文武天皇の後継問題
第六章 皇位継承の後見役
一 草薙剣と黒作懸佩刀
二 珂瑠皇子の即位
三 平城遷都の背景
四 不改常典の創出
五 尊重される長屋王
六 長屋王の祟り
おわりに

本書より抜粋

初代神武天皇から皇位は連綿と継承され、今上天皇は第一二五代となる。ただ、「日本」という国号とともに、君主号である「天皇」は、第四十代天武天皇、第四十一代持統女帝から始用されたと考えられるから、「日本国天皇」の皇位継承は天武・持統朝からであったと言える。
その皇位継承の舞台裏だが、実は古代においてはきわめて複雑な様相を呈していた。そこでは様々な思惑が錯綜し、政権掌握に関わる巧妙な策謀が、絶え間なく展開されていた。
また、現在ではほとんど忘れ去られた摩訶不思議な力が、更に混沌とした状況を生み出していた。それは、不本意な死を遂げた死者の怨霊による「祟り」であり、神聖な誓盟に違背する行為によって神仏からくだされた「天罰(あまつつみ)」であった。
この「祟り」と「天罰」を鎮撫し、忌避しようとする願望は、多くの霊妙な呪的行為を生み出した。そして、その主体が皇位継承に関わる時の権力者であったため、そこには大きな政治的影響力が内在していたのである。本書で扱う「草薙剣の祟り」や「大津皇子の祟り」はその代表例と言える。
更に、霊妙な呪的行為は、あくまで個人的な滅罪の意識と鎮伏除災の願望に基づくため、同時代人からさえ理解されず、賛同を得られない場合があった。ましてや現代人からは奇行や彷徨とされ、不可解な行為として、その本来の意義を見過ごされてしまうことが多い。本書の「物部麻呂の改姓」や「持統女帝の吉野行幸」などはその典型である。
他方、「祟り」や「天罰」が信憑された社会においては、これを政治的に利用し、政敵の業績や政策を否定した上で、自らの願望を達成しようとする者も現れた。本書の「天武天皇の病因占い」がこれに該当する。
たとえ意図的に創出された「祟り」であっても、祟られた当事者にとっては大きな恐懼となり、それまでの方針や今後の構想への懐疑を誘う。また、周囲の人々も「祟り」に煽動され、祟られた者への猜疑心を形成するには十分な効果をもっていた。
このように、古代のできごとには、現実的な目的、思惑や策謀などの顕界的要因と、「祟り」や「天罰」の恐怖を鎮撫、忌避しようとする冥界的要因があった。そして、この両因を追究することにより、はじめて真実の古代史に近づけるのではないかと考える。
当然のことながら、古代のできごとすべてが、この両因に基づくとし、追究すべき必要性を主張するものではない。むしろ、顕界的要因のみの場合が多い。
それでも、冥界的要因が起因しているできごとも存在した。例えば、六八六(朱鳥元)年六月十日、天武天皇の病因が占われ、「草薙剣の祟り」と導き出された。天皇の発病、そして死に至らしめた病因が「占い」によって診断され、「祟り」と判断されたことが、政府編纂の正史『日本書紀』に記されている。
これが古代の公式見解である以上、冥界的要因の追究は不可欠な一視点であると言える。われわれには理解しがたいが、短絡的に非科学的と評価し、迷信的行為と判定してはなるまい。詳しくは本文で扱うが、この病因占いは皇位継承にも大きな影響を及ぼしているから、これを安易に看過することはできない。
祟りや鎮魂の歴史について、近年の一般書としては『日本の怨霊』(大森亮尚・平凡社、二〇〇七)や『跋扈する怨霊』(山田雄司・吉川弘文館、二〇〇七)、『怨霊の古代史』(堀本正巳・北冬舎、一九九九)などに学ぶことができる。だが、『妖怪と怨霊の日本史』(田中聡・集英社新書、二〇〇二)が「八世紀、死者たちは政治的な影響力をもつようになり、歴史の動静に参画し始めたのである」と記すように、長屋王や井上内親王などから以後の怨霊について主として語られるケースがほとんどである。
そこで本書は、冥界的要因を一方の視点として位置づけ、天武系皇統における皇位継承の実態を究明する。また、それに関わる持統女帝と藤原不比等の策謀の真相について明らかにしようとするものである。(本書「はじめに」より)
 

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